研究概要
本研究室では、「計算統計物理学」に関する諸課題の研究をしています。1950年代初頭、登場したばかりの電子計算機(コンピューター)を用い、多数の分子からなる系を計算機内に再現し、マクロな物性や性質を研究するシミュレーションの手法が拓かれました。この「分子シミュレーション」における計算手法は、多体系の分子の協働現象である相転移やガラス転移、また熱の輸送(伝導、対流)、さらには散逸系(粉体)など非平衡現象に潜む共通の性質をミクロな分子の動きという視点から解明することに、大きな貢献をしてきました。
このようなミクロとマクロの階層を明確に意識した「計算統計物理学」の研究では、60年余りの歴史において、物理現象に対しての本質的な理解を深化させ、広範な領域で成り立つ新しい普遍的な法則の発見にもつながってきました。分子シミュレーションは、まさにマクロとミクロをつなぐ架け橋としての重要な役割を担ってきております。本研究室では、分子シミュレーションの創始者の一人で、計算統計物理学を拓いたバーニ・アルダー氏との共同研究で得られた貴重な経験を活かし、世界で未解決の統計物理学における難問に対し、計算統計物理学の観点から解明に取り組んでいます。