研究内容

学部生向け

研究の具体例をいくつかあげて説明します。

本研究室では、熱力学、統計力学をベースに分子シミュレーションを用いて非平衡現象の研究を行っています。「分子シミュレーション」がキーワードです。ここ数年、卒研では、「相転移と臨界現象」「構造ガラス系」「粉粒体」「アクティブマター」「スターリングエンジン」といったテーマを研究しております。一見、スケールや概念が異なるようにみえますが、様々な現象に共通する最小要素に着目し、モデル化をし、計算機を使って解明していくといった普遍的な法則の探求をしています。

1.「相転移」とはなんでしょうか?

2020年2月に国立科学博物館で「相転移」をテーマに展示が開かれ、大変盛況だったそうです。大雑把にいえば、均一な相(固体、液体、気体)が外的条件により相から相へと変化(転移)を起こす現象のことです。身近な物質を例にとると、温度の変化により氷が水に、水が水蒸気に転移することがあげられます。しかし、相転移の概念は、物質の3態間の変化にとどまりません。磁石の性質、交通渋滞が起こること、宇宙の始まりにいたるまで、相転移という概念が関係してきます。このようなマクロな性質や法則の違いは、ミクロな多数の分子や構成素子の動きや協働現象により起こすことにより生じます。不思議ですね。では実際、ミクロのレベルではどのような変化が起きているのでしょうか?一般に、実験では個々の分子の動きを直接詳細にみることは難しく、また理論は複雑な多粒子系の動きを平均化(粗視化)し簡単で理想化したものを扱う場合が多いです。1957年、アルダーらは、「分子シミュレーション」という全く新しい第3の方法論において「分子動力学法」を世界で初めて開発することに成功し、ミクロな協働現象と相転移の謎の解明に挑みました。その結果、反発力しかない剛体球系(ミクロなガラスビーズのようなものが集まった系)でも液体状態から結晶へ相転移を起こすことを発見しました。当時の主要な学会では、この「剛体球問題」が大きな論争となっており、理論の結果は否定的であったため、学会の見解は真っ二つにわれてました。「分子動力学」における結果は同時に発表された「モンテカルロ法」の結果と一致し、「相転移」の存在を明確に示しました。その後、この結果は「アルダー転移」ともよばれるようになり、計算機を使って物理現象を解明する「計算統計物理学」という新しい方法論を拓いた初期の成果としてのマイルストーンとなり、また統計力学や計算物理学のみならず物性物理学に大きな影響を与えた金字塔となりました。今日では科学史上の大きな成果として知られています。(もう少し、詳しく知りたい人→「アルダー転移とはなにか。(作成中)」の解説と参考文献をごらんください。)

アルダー氏は、「分子シミュレーション」の父とよばれています。2007年に金沢で「アルダー転移50周年」のシンポジウムが開催されました。その後、共同研究する機会に恵まれ、3本論文を出版することができました。アルダー氏は、2020年9月7日に94歳で逝去されました。

アルダー転移とはなにか(作成中)

2次元アルダー転移(作成中)

2.「構造ガラス」とは何でしょうか?

箱に入れたガラス球ビーズでたとえてみます。箱が大きい状態では、分子は液体状態で乱雑に動き割ります。この箱を急に縮めてみますと乱雑な配置のまま動きが凍結します。分子の配置は乱雑な液体のような状態であるにも関わらず、分子は動いていないため固体のような状態となります。分子の構造的に凍結(配置が長時間変わらない)ことから「アモルファス」とよばれたり「構造ガラス」とよばれたりします。ガラスで運動が凍結する直前の状態は過冷却液体とよばれます。過冷却液体からガラスになる直前に構造緩和が著しく伸びることが知られています。なぜ長時間にわたり緩和が増大するのか、全体が一様に緩和せず、空間不均一性とよばれる局所的な領域のみで緩和が起こることや、粒子が数珠つながりにポッピングを起こす現象も知られていますが、これらがガラス転移近傍でどのように緩和するかのメカニズムはよくわかっていません。このような単純な現象においても大きな神秘が隠され難問となっています。

英文ですがEulekAlert!(AAAS)などが参考になるかと思います。

3.「粉体」とはなんでしょうか?

そうです。粉です。パチンコ玉と思ってもよいです。マクロな物質では、必ず散逸が伴います。高校生向けの公開講座のテキストがありますので、こちらを参照してみてください。

粉粒体の不思議を科学しよう!

4.「ナノエンジニアリング(ミクロな熱機関)」

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